私はリベラルを装う偽善者でした。

P2015年03月08日
南アフリカ、アパルトヘイト時代にルーツを持つライフコーチ、ブルース・ミュージク氏が黒人への恐れを克服する為に黒人ゲトーに住んだ経験と共に、真実を隠し続けて生きることとワクワクしながら活力的に生きる幸せな人生の関係について語る。(TEDxSinCity 2011より)
【スピーカー】ライフコーチ ブルース・ミュージク(Bruce Muzik) 氏
【動画もぜひご覧ください】
The big secret nobody wants to tell | Bruce Muzik | TEDxSinCity
若干10歳で人種差別主義者に
ブルース・ミュージク氏:10歳の時のことです。今日はママがビーチに連れて行ってくれると言っている。素晴らしい日になるに違いない! とわくわくしていました。車に乗り込みます。海岸沿いを走ります。するとこんな看板が見えてきました。「白人専用」。
ビーチにつくとそこには大きなフェンスがビーチの真ん中に建てられ、真っ白できれいなビーチエリアと岩がごつごつしているエリアに分かれていました。母に聞きます、「なんでビーチにフェンスがあるの?」。母は言いました、「これはビーチを白人用と黒人用に分ける為にあるのよ」と。
私は10歳でしたが、このビーチで過ごす一日だけで、黒人は私達の車を盗もうとする危険な存在であること、黒人は白人の生活から隔離されているべきだというメッセージを受け取りました。私は若干10歳にしてすでに人種差別者です。その18年後、私は音楽プロデューサーで、アフリカのヒットチャートトップ40で一位になる曲をつくり、素晴らしい女性と恋をしていました。
しかし、私の「成功」の中の深いところで、なんだか感覚が麻痺してしまったような感じがしていました。感覚が麻痺して、こころが動かなくなったことがある人はいますか? たくさんいますね。ありがとうございます。
でももちろん、こころが全く動かないんだ、なんて人には言いません。誰かに調子はどうだと聞かれれば、「すごくいいよ! そっちはどうだい?」と、誰にもこの虚無感を知られないように元気に答えていました。
“自称”リベラルの化けの皮は剥がれたとき
ちょうどその頃、南アフリカのアパルトヘイトが終わり、民主化への変化が起きている時でした。当時「新しい南アフリカ人」と見られるのが流行りでした。つまりリベラルで新たな変革を喜ぶ白人を指します。そして私は自分が「新しい南アフリカ人」のひとりであることを誇りに思っていました。
ある日、「ブルース、君には黒人の友人は何人くらいいるんだい?」と聞かれました。聞かれてすぐ嘘を言いました「3人かな」。実は私には黒人の友人がひとりもいなかったからです。「つまり君は5800万人もこの国に黒人がいるというのに、3人しか個人的に黒人を知らないと言うんだね?」。
その瞬間自分が偽善者であることに気がつきました。自分では「新しい南アフリカ人」だと思っていたものの、実は私の中の人種差別的感情は抜けてはいなかった。
私が雇っている黒人のハウスキーパーが家に来て掃除をしていると、彼女が家にいることがすごく居心地が悪く、早く終わらせて帰ってくれないかな、と思う自分。そしてレコーディングスタジオで働いて帰宅しようと思って駐車場に止めてある私の車の周りに黒人がたむろしていると、たとえ30分でも受け付けで彼らが去るまで待ってから、自分の車に向かう自分。
決意の引っ越し
私は自分の人種差別的感情に対応することにしました。私の文化を良く知り、黒人に対する恐れの気持ちを克服しようと決めました。
私はケープタウン近郊の黒人のゲットー街にある「カックヤード」つまり「壊れかけた庭」と地域で呼ばれるエリアにある家に住むことにしました。想像してみてください。月曜日、朝10時頃、2週間後に引っ越すことになっているまだ見ぬ私の新しい家まで運転していく。
二人の男がその前でビールを飲んでいる。
これが私の慣れ親しんだ家と生活です。でも新しい家に足を踏み入れ、ああよかった、と感じました。なぜなら、水道も引かれていないこのような家に住む可能性もあったわけなんです。
車に戻り段ボール箱を中から取り出し始めます。すると周りに人だかりができ始めました。10人から15人くらいの黒人が周りに立っていたと思います。
ひとりの女性がやってきて、「ヌーグー! 何しているの?」ヌーグーとは地域の言葉で白人を指します。「ここに越してきました」と答えました。頭が混乱、パニックになった時の人の表情がどうなるものかを教える教科書がもしあれば、彼女のその時の表情がそこに差し込まれることは間違いないでしょう。
私の一番好きなアフリカ人が信じられない! という気持ちを表す時の表現の仕方は「ホォォー」と言って首を左右に振るものなのですが、彼らはそれをしていました。彼女はまた聞きます「なんでここに引っ越してきたんだい?」。
この時点で私は本当のことを話せば後にスムーズにここで生活できるのでは、と考えます。
「私の国の文化を知りたくて、皆さんのことも良く知らなければならないなと思ったんですよ。お願いですから攻撃しないでください! 私は危険人物ではありません!」。
そう言えば私はきっと生涯黒人への恐れを克服することなく、リベラルを装う偽善的な「新しい南アフリカ人」で有り続けるでしょう。
深呼吸してから言いました、「実は最近自分が人種差別者であるということに気がついたのです。私は黒人が怖い。ここに来たのはその恐れを克服する為です」。
私を囲んでいた人達は皆、こいつは一体何を言っているんだ、という顔をしていました。「ホォォー」が更に大きくなりました。
(会場笑)
まず第一に皆なぜこのクレイジーな白人はこんなおんぼろ家を訪問しているのか、と不思議に思った後にわかったことには、近隣の白人宅まで5マイルも離れているゲトーに家を借りようとしている、しかも自分で人種差別者と言っている、こいつはアホか! と彼らが思ったことは明確でした(笑)。
人生が変わった瞬間
同じ女性が言いました、「ヌーグー、手伝おうか?」と。ノー! 彼らに持ち物を全部持ってかれる! と思いました。
(会場笑)
でもここで断ったら彼らはきっと気を悪くするだろうとも。気を悪くした彼らは、私を彼らの仲間に受け入れることもないだろうし、悪ければ殺されるかもしれないと。しかしここで、このように考えることを止める為にここにやってきたんだろ、と自分に言い聞かせ、「じゃあ手伝いをお願いします」と言いました。
段ボールをひとつずつ車から出し、家に運ぶのを手伝ってもらいます。もちろん何も盗まれませんでした。その代り、私が経験したこともないようなパーティが開かれました。右にいるのが私。ウンパバティを飲んでいます。
ウンパバティとはペンキのカンで製造されるアフリカのビールです。そしてペンキのカンから直接飲みますので、味は最悪です。もしそれを差し出されることがあっても飲んではいけません。
(会場笑)
しかしこのパーティは本当に今までに経験したことがないものでした。ハイテンションになり、たくさんの人にキスされ、たくさんの質問を受け、たくさんの食べ物を出してもらいました。飲み物は次々と注がれ、私が予想していたことと全く逆のことが起きました。
そのパーティの夜疲れ、少し酔いが周りながら床に着きます。しかしなかなか寝付けませんでした。銃声、警察のサイレンの音、隣の家から聞こえてくる叫び声がします。ベッドの中で、そのうち誰かが私のドアを蹴破り、侵入し、頭に銃を突きつけられて、持ち物を全部取られ、しまいには殺されるに違いないと思っていました。
翌日目が覚めます。予想していたことは起きませんでした。そして皆がやっているように外に出て、朝食を外で食べました。このゲトーでは全てが路上で行われますから。
朝食を食べているとリュックを背負い、学校に行く途中、下を向きながら歩いている男の子がこちらに向かってきました。彼は私に気がつくとビクっとして、「ヌーグー、ここに住んでいるの?」と言いました。私はうなずきました。彼は彼の足先に目線を落としています。
その後彼は、私が生涯忘れない言葉を言いました。彼は顔をあげて「おかえりなさい」と言ったのです。その瞬間、28年間もの間抱いていた恐れが消えました。同時に虚無を感じていたこころ、人生に感動を覚えなかったこころが動きだしました。そして彼はそのまま歩き出しました。これがその子です。
一か月後、私はその家を離れることが出来ませんでした。最終的に私はそこに半年滞在しました。一番近所の白人まで5マイルの距離があるところ、黒人だらけのゲトーにです。
私の人生は変わりました。私のうつ、虚無感は消えました。私のこころが疲れていたのは私が人種差別者だったからでしょうか? 真理は誰にもわかりません。
確実にわかっているのは、ずっと隠し続けた真実に目を向け、それをオープンにシェアし、自分自身でいることで、「僕はもちろん元気だよ!」といつも仮面を被るような生き方はもう出来なくなったことです。

Topazius Mon 9 Mar 2015 10:40PM
Ryo, did you know this story?
Holmes already know.

RYO TANIGUCHI Tue 10 Mar 2015 11:07AM
No, I didn't know about it.
I was moved.
RYO TANIGUCHI · Sun 8 Mar 2015 3:26PM
GREAT!
He overcame his brainwashing with his free will. He is truly honest.
https://www.youtube.com/watch?v=lkbWIfP3mLw